商品市況展望 割愛版

平成15年12月14日記

 

 今年も大納会まで残り2週間となった。そのため今週と次週のレポートは、今年1年を振り返ってみる事としたい。

 さて年始に出された様々な経済予測は、一体どの程度当ったのであろうか?今年年頭に東京12チャンネル系のテレビで放映された『キッシンジャー・レポート』は結構秀逸なものであると評判であったが、さてその結果は?

 ではまず年頭に出された氏の予測から…

1、イラク戦争は皆がすでに予期しているため、世界経済にあまり大きな影響は与えない。

2、石油の値段は戦争が始まると上がるが、短期間で下がる。

(詳細)4月初めまでには対イラク戦争が開始されるだろう。戦闘機関は3週間から4週間で終わり、4月には終わっているだろう。

70年代のソ連の兵器しか持たぬイラク陸軍は、すぐに制圧できるだろう。毒ガスなどをフセインが使おうとしても、指揮官たちは戦争責任の追及を恐れて、命令を聞かないだろう。

 戦争の後、中東における米国の影響力は拡大し、一時的に上昇した石油価格は、豊富に出回って下落する事となろう。

 

 戦争開始時期、終了時の予測はほぼ的中と言っても良かったのでは?この放送時点では、まだ戦争回避の予測もあったのだから…しかし確かに世界経済に大きな影響があったとは思えなかったが、その後のテロの頻発は予想外だったか?結局また上がってしまった石油価格の動向はハズレだ!

 

3、北朝鮮は2003年後半、核開発についてアメリカと話し合いを始める事になる。

4、日本・中国・米国・ロシア4カ国が一緒に行動すれば、金正日を操る事が出来る。

5、2003年、朝鮮半島では戦争は起きない。

(詳細)金正日が2003年に日本を攻撃する事は無いだろう。しかし韓国を脅かすだろう。すべては経済協力をさせるための駆け引きであるが、米国は経済的に崩壊している北朝鮮の金体制の自然な崩壊を待っており、なんらメリットの無い単独での介入は考えないだろう。

北朝鮮は核兵器を持って身構えてはいるが、フセインはテロリストと繋がっておりもっと危険だとの見方を米国はとっている。

 

 結局、まあ氏の言うとおりになっていると考えて良かったか…一応6カ国協議も始まっているし、戦争は確かに起きてはいないのだから。

 

6、アメリカ経済は2003年3%拡大し、ブッシュ大統領の人気は依然として高い。

 

 米国は経済成長を続けているものの、ブッシュの人気はどうかな?

 

7、私は日本に歴史的信頼を持っているので、2003年か4年には、日本が今の難局から抜け出すと信じている。

(詳細)日本の改革が進まないのは、現実には人々の生活は裕福なものであり、とことん行き詰っていないからである。日本は歴史的に見て社会の規律が保たれており、国民に犠牲的な精神があるので、必要とあれば変化を起こす能力は持っている。(要はもっと悪くならなければ浮上は無いと言う事?)

 

 小泉改革では保険料が上がっただけの気はするが、まあこんなもんでしょうか…

 

8、ロシアは中国より危険だが、プーチン大統領は2002年と同じような状態を今年も続ける。

9、中国は経済拡大を続け、大きな混乱や突然の変化は起きない。

(詳細)2003年、中国指導者の世代交代は順調に行われる。胡錦濤総書記は優秀な指導者であり、国内に内需を持った中国経済は8%の拡大を続けるだろう。今まで経済成長をしたのは一部湾岸地域だけであり、今後内陸部の内需を期待できる。

 

 夏場のSURS問題を乗り越えて、中国の経済成長は目覚しい…今は相場材料のほとんどが中国関連であるし。

 

10、円ドルレートは、1ドル=130円から140円になる。

 

 これはどう見ても大外れである。

 

 結局、政治的な事は良く当たっているが、相場的な事は外れていると言う事か。もっとも相場は生き物ゆえ、氏だって道中で転換しているかもしれないし、それを持って予測を馬鹿にする事は出来ないが…

 氏のような人は米国の政策、あるいは考えを提唱しているのであろうから、当たったものは米国の政策がうまくいったもの、外れたものは米国の政策が失敗したものとも考えられるかもしれない。

 さて高齢の氏は、今年もテレビ出演してレポートを出すのだろうか?年明けに出たら、1月号にてご紹介したい。

 

 

 

〔石油製品〕

 

今週の原油の動き

 

12月限(当限)

前日比

5月限(先限)

前日比

12月8日

\18,680

-290

\17,690

-270

12月9日

\19,100

420

\18,040

350

12月10日

\19,150

50

\18,120

80

12月11日

\19,100

-50

\18,110

-10

12月12日

\19,150

50

\18,240

130

 

 まずは原油から…先週号においては『上がって18,000円乗せ程度下値は17,000円を若干割り込む程度ではあろうが、戻り売り方針である。』とした。

 今週の相場展開は、週明け17,600円台でスタートした先物はNY原油の堅調を映して上昇。週末は18,240円まで戻して終了している。元々原油に対しては戻り売り相場を唱えてきたのであるが、やっと売っても良いかな?と思われる値段に来た途端、週末のNY原油は急騰している。

 週末のNY原油は、米中東部での気温低下予報を受けて急騰した灯油に引きずられるように値を飛ばし、33.04ドル前日比1.19ドルの急騰。(高値では33.20ドルまで出ている)東京はこんなに暖かいのに米国が寒いせいで、東京市場の売り方も背筋が寒い?

 NY市場の直近の高値は11月20日の33.55ドルであるが、まだこれをクリアはしておらず2番天井と考えるか?それともこれをぶち抜いて、思わぬ大暴騰相場へ発展するのか?売り屋の当方は前者に分があると考えたいが、過去何度か年末には、東京市場では思わぬ形で大衆買い殺到からの踏み上げ相場を演じているだけに、空恐ろしい気分ではある。

 NY市場の急騰の背景には、今週発表された全米石油在庫がEIAで640万バレル減・APIで890.3万バレル減と予想以上に在庫が急減していた事もある。しかし米国の在庫は少なかろうが、世界的に見ればOPECは公式生産枠2,450万バレルを120万バレル上回る生産を続けており非OPEC生産国も34.5万バレル増加である。決して不足しているわけではあるまいが…

 イラクも実は石油生産が順調に回復していると見られており、本来ならばこれ以上の高値はあるはずは無いのであるが、ともかく買い人気がNY市場ではかなり強いようである。流れに敢えて逆らうのは、あまり得策ではないか…

 週末発表されたCFTCによる12月9日現在のファンドの建て玉は買い89,938枚(前回発表時より8,683枚増)、売り56,717枚(同7,913枚増)となっており、ネットで33,221枚の買い越しである

 9日時点ではまだ32ドル台に乗せたばかりの時であり、きっと週末はファンドの大量買いがまた入ったろう…

 さて東京市場に話を戻すと、直近の高値は11月19日の18,550円であるが、ここまでは週末終値から僅か310円の上昇で届く。NY原油の急騰を受けてこれは簡単にクリアするものと思われ、これは大きな三角持ち合いを上にブレイクする形か…ゆえに怖くて売れない形になってしまったと見る。

 結論として当方の相場観は、18,550円オーバーとなれば、19,000円台も見えてきたかもしれない。ここから途転買いとまではする気も無いが、売り玉は総撤退で天井を見極めるのが良いと見る。

 

 

今週のガソリンの値動き

 

1月限(当限)

前日比

6月限(先限)

前日比

12月8日

\27,100

-120

\28,290

-10

12月9日

\27,290

190

\28,450

160

12月10日

\27,390

100

\28,740

290

12月11日

\27,290

-100

\28,700

-40

12月12日

\27,710

420

\28,910

210

 

 続いてガソリンです…先週号においては『28,000円台は売り方針。しかしどの限月においても、26,000円台は逆に買い方針である。』とした。

 今週の相場展開は、先物6月限は12月2日27,880円まで下落した後再び上昇に転じ、週末には高値で28,970円と29,000円台寸前まで上昇。11月21日に記録した29,020円クリアは目前であり、週明けNY原油高を受けた上昇で更新は必至。今年もやって来てしまった年末の急騰劇である。

 こうなるともう売れない!おそらく3万円台は一度付けねば納まらない形となってしまったかもしれない…

 11日現在のスポット価格は海上で26,500円(京浜)〜26,600円(阪神)と400円〜300円安陸上では27,400円〜27,200円300円〜200円安である。輸入採算価格は30,100円1,000円高となっている。(いずれも前週比)

 川下の需要不振から、スポット市場は相変わらずの安値低迷。もっとも道中26,300円〜26,200円まで下がったところからは若干反発に転じており、底入れ感も台頭してきている。

 19日に行なわれる1月限納会で、すでにスポット価格よりも1,000円高い1月限が急騰という事は無かろうが、先物は人気が強い方に出て行くならば、輸入採算価格の3万円台を目指しても不思議は無かろう…

 どの限月においても26,000円台は買いとはしてきたが、この一ヶ月26,000円台を記録したのは2月限が一瞬あっただけ。年が明けてまた下げ相場が来るまでは、当分そんな値段は付きそうも無い。

 現状の原油価格から算出される元売のコストは、28,000円〜29,000円程度と見られており、スポットを引き上げるためにもぼちぼち介入してくるだろう。年内のあと2週間は、こんなところから買いか?と言われても、買う方がリスクは低いだろう。

 週末現在の自己玉は売り31,504枚、買い35,507枚となっており、9日より途転買いに転換。週末は売り買いともに大幅増である。

 …中略…

 結論として当方の相場観は、先週までの方針から大転換。大納会に向けて3万円台乗せの急騰相場を予測する。

 

 

今週の灯油の値動き

 

1月限(当限)

前日比

6月限(先限)

前日比

12月8日

\27,680

90

\25,130

-160

12月9日

\27,850

170

\25,410

280

12月10日

\28,230

380

\25,780

370

12月11日

\27,470

-760

\25,700

-80

12月12日

\27,390

-80

\25,960

260

 

今週の軽油の値動き

 

1月限(当限)

前日比

6月限(先限)

前日比

12月8日

\27,010

10

\25,990

-20

12月9日

\27,230

220

\25,410

280

12月10日

\26,900

330

\26,350

110

12月11日

\26,700

-200

\26,240

-110

12月12日

\26,800

100

\26,410

170

 

 最後に灯油・軽油です…先週号においては『灯油は先物に関しては24,000円台ではさすがに値頃的に売り妙味は薄いと思われ、むしろ投げが出たならば買っても面白いか。1月限〜3月限は、需要の回復なくして戻りは無し。戻り売り方針に変化は無いだろう。軽油も戻り売り方針に転換である。』とした。

 今週の灯油の相場展開は、期近3本と先限3本が全く違う動きであった。先物はどちらかと言えばガソリンとともにの上下動であるが、当限はガソリンとの鞘取りの仕掛け・解消で大きな乱高下であった。需要期下なのに、暖冬と大量の在庫でガソリンに対し根本的には弱いゆえに、このような動きとなったものである。

 ともかく今冬の相場は、例年の強い期近の需要期限月に対し、弱い先物の不需要期という通常のパターンは通用していない。すでに安値圏にある先物は、原油価格(ガソリン価格)が上がれば同様に上がろうし、需要期限月は総じて高い値位置に入るものの、現状ではガソリンよりも安いスポット市場である事を考えても、勢いは無い状態である。よって売り狙いは1月限〜3月限、買い狙いは4月限〜6月限と言う事になる。

 11日現在のスポット価格は海上で26,000円(京浜)〜25,600円(阪神)300円〜500円安となっており、陸上では27,200円〜27,000円と500円〜400円安である。輸入採算価格は30,400円となっており変わらずである。(いずれも前週比)

 在庫は前週比16.9万klの減少の497万klとなっており、やっと減少に転じては来た。冷え込みによって実需が回復すれば、元々毎週20〜25万kl在庫は取り崩されるのが通常のパターンであるが、それでも半減するまでは10週間以上掛かる計算。そうこうするうちに春がやってくれば、また要らなくなるのも道理。劇的に在庫を減少させるには大量に輸出を敢行するしかなかろうが、そう簡単に行くかどうかは不明である。

 よって東京市場1月限価格27,000円台半ばは、輸入採算価格3万円台に対し(JOX価格はこれに近い水準か)と比較すると割安であるが、スポット価格26,000円に対してはかなり割高の計算となっている。このため阪和興業がJOX売り・東京買いの裁定取引を仕掛けて急騰したり、逆にその手仕舞い売りやスポット市場が反応しないのを見て急落したり…

 現状の原油価格からの灯油採算価格はガソリン同様に28,500円前後と言われており、あまりに安過ぎる価格も続かないでは有ろうが、価格の問題ではなく消費がなければ投げ売りになるのは当然の事。また投げ売りが止まったとしても、敢えて買い進む向きもまた無かろうし…

 19日の1月限納会は、果たしてどの辺の価格帯で終了するのか?当方は26,000円台はあったとしても、28,000円台など有り得ないと考えるが…

 週末現在の自己玉は売り38,545枚、買い17,067枚となっており、買い玉も増加したが売り玉も増加して、大幅売り越しに変化無しである。

 …中略…

 さて今後の相場展開であるが、先物に関してはガソリンに追随して上がれば27,000円台の可能性も無きにしも非ずか…ただしそうなっても、1月限〜3月限の上昇幅は限定的なものであると思われ、所詮は戻り売りの範疇を出ないものと想定する。

 

 さて軽油は、19日に初めての納会を迎える。果たしてどの程度の受け渡しがあるものなのか?そしてその価格は?まずはそれを見てからでなければ、何とも言えないところはある。

 もっとも一時は危機的水準まで減少したと言われた在庫が、元売各社は灯油の生産を軽油に廻してきたとされ、回復傾向とはなっている模様。また灯油と違い、これから需要が大きく膨らむシーズンと言うわけでもないゆえ、理論的には上昇する余地は少ないものと考えられる。他油種高があれば、それにつられる程度であろう。

 11日現在のスポット価格は海上で27,400円(京浜)〜27,500円(阪神)と1,200円〜1,000円安となっており、陸上では28,000円〜27,800円500円安〜400円安である。輸入採算価格は30,300円300円高となっている。(いずれも前週比)

 海上価格よりも陸上価格が安いという事は、川下の実需不振を物語るものと見る。ガソリン・灯油のスポットが一応は下げ止まった中で、軽油のスポットは続落なのもまた嫌味。

 

 結論として当方の相場観は、灯油は先物に関してはガソリンに追随して上がれば27,000円台の可能性も無きにしも非ずか…ただしそうなっても、1月限〜3月限の上昇幅は限定的なものであると思われ、所詮は戻り売りの範疇を出ないものと想定する。

 一方の軽油も、スポット市場の動向を見る限り上値余地は少ないだろう。買うならガソリンの方がましか…

 

 

 

〔貴金属〕

 

今週の白金の値動き

 

12月限(当限)

前日比

10月限(先限)

前日比

12月8日

\2,778

17

\2,644

20

12月9日

\2,793

15

\2,648

4

12月10日

\2,808

15

\2,666

18

12月11日

\2,840

32

\2,689

23

12月12日

\2,840

0

\2,688

-1

 

 金相場は、先週号においては『遅かれ早かれ金はファンドの売りから、早晩天井確認となろう。売り狙い方針に変化はなし。』とした。

 今週の相場展開は、12月2日の1,414円は更新していないものの、週末には1,412円で終了。下がらぬ相場にイライラはつのるが、商品全般に高値を指向する中で、当方も1,500円近くまでは一度上昇してもしょうがないのか?とあきらめに似た心境になって来ている。

 もっとも東京市場は相変わらず取組高は増加傾向にはなっておらず、ここからの大幅上昇を期待して買う投資家もまた少ないように感じられる。明らかに買い過ぎと見えるNY市場のファンドは、果たしてどのような動きを見せるのであろうか?

 週末のNY市場においては、ドル安・ユーロ高を背景にして上昇。12月10日の413.3ドルは更新してはいないが、410.1ドルと再び410ドル台乗せである。今度は急激に円高になっているわけでもないゆえ、1,414円は簡単にクリアしそうではある。

 週末発表されたCFTCによる12月9日現在のファンドの建て玉は買い140,647枚(前回発表時より1,995枚減)、売り33,619枚(同3,832枚増)となっており、ネットで107,028枚の買い越しである。

 先週よりは若干買い越しは減少したものの、一体どれだけ買えば気が済むのか?というレベルである。

 結論として当方の相場観は、ファンドの利食い売りによる急落は必ずやってくると信じたいが、今は『待てば海路の日よりあり』としか言えぬ。売り方としては、一度上に吹き上げて長い上髭でも付けないと、この上昇相場は終了しないのかもしれないとの覚悟は必要だろう。

 

 

 銀相場は、先週号では売り方針継続である。』とした。

 今週の相場展開は、12月10日192.0円の高値を記録。金相場の上昇に引っ張られる形で、どうにも売り方には分が悪い展開が続いている。山の8合目以上に来ているとは思うものの、何で銀がこうまで買われなければならぬのかの材料が判らん。

 それと言うのもNY市場で12月10日に記録した573.5セントは、90年代以降では98年2月に記録した726セント以来の水準であるゆえに…それ以外に600セントに乗った相場も一つも無いのだ。

 要は金とともにファンドの買いによって、チャートが上昇波動となり上がっているに過ぎない。(もっともそれが重要だと考える人も居ようが…)

 週末発表されたCFTCによる12月9日現在のファンドの建て玉は買い50,508枚(前回発表時より3,010枚増)、売り3,595枚(同939枚増)となっており、ネットで46,913枚の買い越しである。

 今までのパターンでは、ファンド買いが5万数千枚の買い越しになった時にはピークとなっている。もうすぐピークに差しかかるのであるが…

 結論として当方の相場観は、明らかに買われ過ぎの状態となっていると考える。どこでエネルギーを出し尽くすかが焦点であろう。

 

 プラチナ相場は、先週号においては『値頃が値頃なので下がらぬとは言えないが、売り方は少々の下げではどうにもならぬ。そのうち売り場が来るであろうから、因果玉はともかく切っておいた方が良いだろうと考える。』とした。

 今週の相場展開は、内外市場ともにまたまた新高値の更新である。国内市場では期近ベースでついに2,800円台半ばまで、先物も2,700円台乗せ寸前まで上昇している。先物の高値は11日に記録した2,694円である。

 ともかくこの相場は、ファンドの策動にいい様にやられているとしか言いようは無い。すでにジョンソン・マッセイ社の予測した価格レンジの上限である820ドルは、週末のNY市場で高値821.9ドルと達成である。(終値は前日比11.8ドル高の819.4ドル)

 さあ、もうここからはどこで売りに出るかだけを考えねばなるまい。売りでやられた相場は、売りで取り返す以外に道は無し!曲がり屋がここから途転買いでもしようものなら、売りでやられて買いでもやられるパターンに陥るだろう。

 未だ当先が逆ザヤを形成している相場ゆえ、売りを長期間持っていればサヤ出世でやられるとの考えもあろうが、パラジウムだって安値から6倍上げてその後暴落した時は、逆ザヤのままであった。また道中誰が買おうと下げに歯止めを掛ける事は出来なかった。

 もっともそのパラジウム相場の時は、その下げの前には実質解け合いの様な状況になっていたし、プラチナ相場が天井を打つ時も何らかのインパクトは欲しいところ…

 それは例えば、納会で突拍子もない上昇をして誰も売る気が無くなるとか、あるいは爆発的な大出来高を記録するとかのようなパニック現象である。それが出現したら、周りの人気がたとえ1,000ドル相場を目指すとかの論調であろうが、敢然と売り向かうべきであろう。

 さて週末現在の自己玉は売り53,837枚、買い42,066枚となっており、8日より途転売りに転じて徐々に売り越し傾向が顕著になって来ている。

 もっともその売りのほとんどが先物1本であるが…ただし、18日に納会する12月限〜8月限まですべて大幅買い越し。特に2月限・4月限の買い越しは異常なほどである。それでも次に出てくる2004年12月限は、現状の2,600円台程度(2,700円でも、2,800円でも高いほど良いが)で生まれるならば、一度は売っておきたい気はする。大体が既存の限月は2,200円〜2,300円で売って400円〜500円は引かされている売り方であろうが、2,600円台から同様にやられるのは3,000円台になった時である。

 いずれにせよ、永遠に上げ続ける相場など有り得ない。23年ぶりの高値は天井圏である事は間違いなく、売り場を虎視眈々と狙うべきだろう。

 結論として当方の相場観は、まずは第一回目の売り場かもしれない候補は、19日(金)の2004年12月限発会日と見る。それで天井を打たぬ場合は、また次回考える事としたい。

 

 

 

〔コーン〕

 

今週のコーンの値動き

 

1月限(当限)

前日比

11月限(先限)

前日比

12月8日

\18,810

-110

\16,800

80

12月9日

\18,990

180

\16,740

-60

12月10日

\18,970

-20

\17,040

300

12月11日

\18,970

0

\17,150

110

12月12日

\19,330

360

\17,420

270

 

 先週号においては、『コーンはシカゴ市場でのファンドの買い過ぎから、目先は下値探りを予測。もっとも逆ザヤの解消は困難と見られるため、急落時は押し目買いでの対処。大豆は先物中心に底値探りの展開と見て目先は売り有利か。しかし大暴落するほどの状況では無いと見る。』として終了した。

 今週は前場の概況メールで報告の通り、道中で完全に強気(買い方)に転換である。コーンの三尊天井型チャートは完全にブレイクされており、こうなっては元々が強い相場であるだけに、下げはまだ考えられない。道中下げても、両商品ともに中国材料でさらに舞い上がる可能性は大であろうと見ている。

 

 まず今週のコーンの相場展開であるが、12月10日には三尊天井のトップである17,040円をブレイク。週末までに17,420円と一気に高値更新である。

 元々96年型相場のようだと指摘してきているが(大体その辺の年だったと記憶しているだけで、正確な年はうろ覚えです)、その当時の先物は2万円ほどが天井だったが、当限は確か26,000円どころまで上げたはず。大幅逆ザヤサヤ出世で、売り方は瀕死の重傷を負った人が多かったと記憶している。今回の相場もそのようにならぬ保障は無い。

 よって7月限より手前の限月はずっと買いを推奨しているが、ただ先物に関しては三尊天井型チャートに敬意を表したのである。しかしそれも今となっては効力が切れたという事。そう言えばプラチナ相場も8月の三尊天井をその後ブレイクしてから、今回の棒上げが始まった事も覚えておいた方が良いかも…

 もちろん急騰の後は、またある程度の下落相場もやっては来るだろう。今週は岡地の大手筋が断続的に買い玉を利食いし、岡地の場ヅラは途転売りにもなっている。一方ではファンドの買い越しが増加しており、自己玉は買い越しのままとはいえ、ここからの上昇は一度下げるかもしれない…

 それでも現状の状況では、先物で2万円。週明け納会する1月限ではなく、次に廻る当限で24,000円何て価格が出現しても当方は驚かない

 ともかく当限に廻った玉は、渡し方商社が不在で受け手が存在する場合は、どこまで上がっても仕方が無いのである。(逆にどんな銘柄でも渡し方商社が居て、受け手が居なければ採算など無視して下がるのだが…)

 さてCFTCにより週末発表された、シカゴ市場でのコーンの12月9日現在のファンドの建て玉は買い147,051枚(前回発表時より21,311枚増)、売り29,594枚(同745枚減)となっており、ネットで117,457の買い越しである。

 昨年夏場に280セント台の高値を付けた時の大幅買い越しに、ほぼ匹敵する水準となっている。明らかに買われ過ぎではあるが、たまに当たるファンドは本当に恐ろしいからねえ…

 

 さて一方の大豆相場であるが、元々はこちらが上げ相場の先導をしてコーン相場も上がっていたのであるが、先物はいずれ南米産が大増産で出てくるとの予測で一時は沈静化。しかしこのところは、逆にコーンに連れて先物が上昇する展開となっている。

 すでに一度かなりの高値まで買われてしまった後だけに、如何に米国が7年ぶりの不作とはいえ、内外ともにコーンよりは若干弱い印象はある。

 しかしそれは一度中国が買い付けの手を緩めたためであり、また材料が織り込み済みとなったためである。しかしそのまま天井打ち〜往って来いの暴落に繋がらなかった相場は、本当の大天井はまだ打っていないと見るべきだろう。

 特にコーン以上に大幅逆ザヤを形成している相場であるが、南米産は早くて6月限以降の限月でしか繋がれず、また商社筋の現物売りもかなり少ないと思われる。そのため何時また舞い上がって、5万円を目指す大相場に発展しないとは限らない。

 いずれは南米産が入るのだからという楽観論は、まだ生育も確定しないうちからそれを手掛かりに売るのは危険であろう。

 なお週末発表された大豆のCFTCによる12月2日現在のファンドの建て玉は買い76,850枚(前回発表時より8,046枚増)、売り18,090枚(同27枚減)となっており、ネットで58,760枚の買い越しである。

 かなり高水準な買い越しポジションである事だけは、間違いない。

 

 結論として当方の相場観は、コーン・大豆ともに押し目買い一貫の相場と見る。特に勢いが付いた場合は、年末は相場が一方通行となるケースも多いため、注意は必要だろう。(来年は高いだろうとの予測を、今年のうちに買いきってしまう事があるため)

 

 

 

〔ゴム〕

 

今週のゴムの値動き

 

12月限(当限)

前日比

5月限(先限)

前日比

12月8日

131.9

-2.1

137.8

-0.7

12月9日

133.7

1.8

139.0

1.2

12月10日

137.8

4.1

143.9

4.9

12月11日

139.5

1.7

145.9

2.0

12月12日

136.2

3.3

142.8

-3.1

 

 先週号においては『今のところ相場がどちらに向かうのかの方向は不透明だが、内部要因ではもう少し戻るのが先に見える。』として終了した。

 今週の相場展開は、3日132.2円の安値から反発した相場が、結局週末寄付き146.0円まで戻る事となった。引け値では142.8円まで反落はしたものの、安値から13.8円幅の上昇ではトレンドは押し目買いに転換であろう。

 売り方大手筋らも10日の前場2節から手揃いで踏み(買戻し)の手口であり、目標としていた120円台の示現はならず、結局132.2円出現の3日にファンドが大投げした時点で底を確認したという事だろう。おそらく今後は、140円割れは買いたい人気が強まるものと想定される。

 強気筋の意見は、来春(おおよそ2月頃には)11月4日の高値161.8円クリアするのだとの見方が大勢を占めており、現状の順ザヤ相場もまた同ザヤ〜逆ザヤへの変化となるために、サヤ滑り相場とはならないとの見方も多いようである。

 さて10日の急騰となった材料はタイ・ハジャイでの洪水であるが、週末の動きを見ると一応はこの材料は織り込み済みとはなった模様。しかしこのまま雨が続くような事態にでもなれば、年明けのウインタリング(落葉期)には生産量が落ち込むため、産地価格はまた上昇する可能性はあろう。問題はタイの原料価格とシンガポール市場の価格に対する、国内市場のサヤという事になる。

 さらには中国が、年明け以降どの程度買い付けに動いてくるか?一つの手掛かりとして、上海市場の値動きにも注意が必要であろう。

 あっという間に5円、10円と動く相場だけに、タイ・シンガポール・上海・日本のサヤもまた、大きな変化となっている。基本的には国内市場が一番安い状態は変わらんが、サヤが拡大時には急騰し、サヤが縮小時には急落するパターンとなろう。シッパー主導と見える相場ゆえに、そのような状態になるものと思われる。

 結論として当方の相場観は、3日の132.2円は底と見て、140円割れは買い方針を良しとしたい。

 

 

 

〔アラビカコーヒー〕

 

今週のアラビカコーヒーの動き

 

1月限(当限)

前日比 

11月限(先限)

前日比 

12月8日

\7,750

-110

\10,390

0

12月9日

\7,720

-30

\10,460

70

12月10日

\7,510

-210

\10,480

20

12月11日

\7,560

50

\10,540

60

12月12日

\7,400

-100

\10,390

-150

 

 先週号においてはNY市場が上がっても反応しない順ザヤ相場の市場はかなり悪いと見る。ただしNY市場はファンドの買い戻しからもう一段高する可能性は残っているため、そこは絶好の売り場になると見る。』として終了した。

 今週の相場展開は、先物は10,500円以下での全く動意に欠ける展開。上がりもしない、下がりもしない展開であったが、当限はまたジワジワと下げる軟調な展開であった。

 どちらかと言えば上昇を指向する銘柄の多い現状の市場の中で、コーヒーだけは全く蚊帳の外に置かれているようだ。ファンドの売り買い以外に何ら材料が無い相場だけに、この状態を抜け出すのは当分困難か?もっとも大幅順ザヤに置かれている銘柄だけに、材料が無く動かない時は時間とともにサヤ滑り懸念が大きく、売り方に有利な展開であるという事だけは言えよう。

 週末現在の自己玉は売り40,074枚、買い12,385枚となっており、まだ売り越し増加が続いている。自己玉はここ最近で、最大の売り越し枚数である。

 その他内部要因については、…中略…

 あるかないかは判らぬが、商社筋がまたファンドの踏みを期待して一時的に相場を持ち上げる以外は、買われる材料は無いだろう。もちろんそれを期待して買うよりは、そうなったら売れば良いだけの事である。

 さて指標のNY市場においては、12月8日67.50セントまで安値から10セント以上の上げを見せたのであるが、国内市場が全く反応を見せないうちに、どうやらこちらも戻りいっぱいになってしまった模様。この急騰はファンドの買戻し以外に何の材料もなかったのであるが、そのファンドの買戻しはおそらく一巡したであろう。

 週末発表されたCFTCによる12月9日現在のファンドの建て玉は買い16,227枚(前回発表時より1,565枚増)、売り24,599枚(同9,632枚減)となっており、ネットで8,372枚の売り越しである。

 24,400枚の売り越しと過去最高水準となった前々回発表からは激減してしまった。ファンド買戻しの戻りは、ここまでと考えて良いだろう。

 結論として当方の相場観は、国内市場の先物は三菱F・ファンドの買戻しから戻らぬとは限らぬが、基本的に戻り売り相場に変化無し。1月限納会に向けて、期近はさらに安値追いの可能性が大だろう。

 

 

 

〔粗糖〕

 

今週の粗糖の動き

 

3月限(当限)

前日比 

7月限(先限)

前日比 

12月8日

\18,600

-70

\18,590

30

12月9日

\18,400

-200

\18,400

-190

12月10日

\18,620

220

\18,580

180

12月11日

\18,630

10

\18,580

0

12月12日

\18,720

90

\18,580

0

 

 先週号においては、『ここからさほどの上昇は無いだろう。買戻し一巡後は、また需給関係の悪さと内部要因の悪さから、元の木阿弥になると予想する。所詮はコーヒー相場と似たようなものだろう…』とした。

 今週の相場展開は、18,500円どころでの小動きな展開。コーヒー同様に全く人気は蚊帳の外に置かれている。確かにどうせやるなら、大豆かコーンでと考えるのは当然かもしれないが…

 さて現在の相場展開は、11月4日17,270円と25日17,310円でのW底の形から、中国の減産の見通しなどを受けて上昇。高値は5日の18,740円まで切り上がっている。

 しかし内部要因は相変わらず悪いままであり、早晩戻り売りを浴びる事とはなるだろう。

 週末現在の自己玉は売り6,992枚、買い3,546枚となっており、若干売り玉は減少したものの、まだまだ圧倒的に売り越しのままである。

 その他内部要因では …中略… 5月限売りの根拠である。

 砂糖自体の材料としては、ブラジルは輸出が遅れているといいそれがNY高に繋がっている面もあろうが、港湾在庫は積みあがっているものと思われ、今後逆に輸出急増で弱材料になる可能性は大。またタイの輸出の大幅増加になる可能性は高く、ブラジルとの競合となる模様。

 なお指標のNY市場におけるファンドの動きは、週末発表されたCFTCによる12月9日現在のファンドの建て玉は買い36,754枚(前回発表時より15,627枚増)、売り32,424枚(同11,790枚減)となっており、ネットで4,330枚の買い越しである。

 一時は4万枚以上の売り越しとなっていたファンドであるが、ここに来てついに途転買い越しへと変化である。大した買い材料も無い中で、ファンドが買い越しになったゆえに天井だろう…

 結論として当方の相場観は、内部要因・NY市場のファンド買い途転から、現状の価格は戻り売りの好機と見る。

 

 

 


 

 このレポートは、私が個人的な判断で書いたものです。

内容の責任はすべて私に帰するものですが、取引に対する利益を保証するものでは在りません。

(当たり前ですが念のため)

 

 

 

 

        岡地株式会社 営業第一部 コモディティアドバイザー

                       中田幸一郎

        TEL:03−5643−8509 直通

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