商品市況展望 割愛版

平成16年5月16日記

 

 NY原油の大暴騰は、ついに史上最高値を更新。昨年のイラク戦争時の高値39.99ドルも、湾岸戦争時の高値41.15ドルも突破する状況となっている。

 相場である限り必ず天井はあるのだが、上がり続ける相場は一体どこが天井なのやら…

 さてイラク戦争での暴騰相場では、2003年2月27日にNY市場は天井を打ったのだが、東京ガソリンはそれに若干遅れた3月11日に天井を記録。ある読者の方から、当方の週末のコメントはそれに似ているとの報告があった…

 その2003年3月11日の日々雑感では、以下の通りコメントしていた。

本日の石油製品市場も、昨日に続いて結局はストップ高含みの大暴騰で終了。お元気な買い方に対し、本日も昨日踏まされたファンドの大量新規売りに出ていたものが、標的にされた模様である。

この乱高下をずっと市場に張り付いて追いかけている当方も、さすがに連日のこの動きには精神的に参るねえ…立会い終了とともに、肩の辺りにどっと疲れが出る。

 そんなわけで、今日は『前場の概況』として会員向けに昼に配信しているメールからコピーする事に致します。会員向けには、週刊レポートのほか、このようなものを送っております。

 本日の石油市場は、NY原油が反落となった事を受けて若干の下落である。原油価格は天井であるとの見方で、戻り売り方針の当方ではあるが、石油製品の天井は、寄り付きの高値から長大陰線を引いて終了する事が多く、今日のようなパターンでは幾ら売り方の当方でも天井確信と言うわけにはいかない。

なおNY原油の反落も、米英が17日期限の修正案の延長を検討していると言う、さらに開戦が伸びる可能性があるものからのものであり、このような状態では戦争プレミアムをすべて買い切ったとは言いづらい…

 もっとも昨日は3品ともまた自己玉が大幅に売り越しを増加させており、またガソリン当限も昨日に輸入採算価格すらオーバーする動きを見せたゆえ、さすがに反落となっている事が、弱材料と言えるか。

 うーん、確かに似ている。特に太字の部分が…これで天井になってくれたら言う事は無いのだが。

 考えてみれば、もうこれでこのレポート及び日々雑感も、すでに5年も続けている。暴騰・暴落は相場の常なれど、我ながらよくもまあこんな相場稼業をずっと続けているものだなあと思わんでもない。業界入りしてからだと、もうすでに20年以上過ぎてしまったしねえ。この仕事を続けている限りは、まあ感傷に浸っている暇など無いけれども…

 

 

 

〔石油製品〕

 

今週の原油の動き

 

5月限(当限)

前日比

10月限(先限)

前日比

5月10日

\24,300

600

\23,200

610

5月11日

\23,820

-480

\22,620

-580

5月12日

\24,370

550

\23,260

640

5月13日

\24,750

380

\23,800

540

5月14日

\25,000

250

\24,010

210

 

 まずは原油から…先週号においては、『袈裟斬りの暴落は必ずやってくると考える。NY市場で41.15ドルオーバーの史上最高値更新が出た後かもしれないが…』とした。

 今週の相場展開は、まさに糸の切れた凧の状態での急騰となり週末には24,100円の高値まで駆け上がった。あっという間にまた1,500円ほどの上昇であり、NY市場も週末には前日比0.30ドル高の41.38ドル(高値は41.56ドル)と、1,990年の湾岸戦争時の高値もオーバーする史上最高値の更新である。

 昨年のイラク戦争時の高値39.99ドルの頃の国内原油先物の高値は21,000円台であったが、今はそれよりも大幅に高い24,000円台!確かにNY原油も高いわけではあるが、38ドル台から3ドル上がってかつての21,000円台より3,000円近く高い状態は過熱気味か?同時に到来している円安が、東京市場の上昇を助長しているとは言えるが…

 大雑把に40ドルで24,000円ならば、10ドル当り6,000円幅。NY原油が50ドルまで上がるのならば3万円と言う事になろうが、そんな高値を世界は果たして容認できるか?現実的には強気のアナリストのコメントでは42ドル〜45ドル程度との見方が多く、しかもNY原油は高止まりが続くとするものが多い。しかしひとたび天井を打てば、相場の習性として高止まりして下落しないことなどは考えられず、半分の20ドルまで下落するかしないかなどはともかくとして、少なくとも32ドル台、東京市場では18,000円辺りまでの今からなら6,000円幅の暴落には見舞われよう。

 この事は銀・プラチナなどの貴金属相場や、大豆・コーンの穀物相場などの最近の暴落を見れば、相場であるゆえ原油も同様の道を将来たどる事は間違いない。問題はその膨らんだバブルのような風船が、一体何時はじけるかである。

 今回の原油急騰は今までのパターンである戦争などのパニック的な買い人気とは違い、米国国内のガソリン需給逼迫からのものであり、戦争終結からすぐに暴落に転じる今までのパターンの天井打ちとは異なるパターンにはなろう。

 今週は一時OPECが万バレルの増産を示唆して下落する場面もあったが、すぐに切り返してしまった。その増産が現実に出来るのか出来ないのかは別として、原油在庫自体は米国も3億バレル台と特に危険水域というわけでもなく、また中国などの消費が伸びているとは言え原油が不足していると言う話は今のところどこにも無い。またガソリンにしても米国で無いわけではなく、カリフォルニア州など一部地域において環境基準に合うものが不足しており、現在の高騰相場の背景はその精製設備も不足している事が主因である。

 よって現状では、明確に下げに転ずるような材料はかなり出ずらい状況な訳である。今は高過ぎると言う値頃感のみが弱材料な訳であり、この秋に選挙を控えるブッシュ政権が何らかの政治的な対応策を出す事のみが、この相場を終焉させる事が出来るのではなかろうか。

 …中略…

 結論として当方の相場観は、NYガソリン相場がどこで天井を打つのかが、この相場の天井を決定させる事となろう。それにはブッシュの何らかの政治的な対応策が出される必要があると思われるが、その辺のニュースに気を付けておきたいと考える。現状でも天井圏である事だけは間違いなかろうが…

 

 

今週のガソリンの値動き

 

6月限(当限)

前日比

11月限(先限)

前日比

5月10日

\37,910

710

\33,020

H700

5月11日

\37,370

-540

\32,320

L700

5月12日

\38,030

660

\32,840

520

5月13日

\38,700

670

\33,540

H700

5月14日

\39,270

570

\33,680

140

 

 続いてガソリンです…先週号においては、『NY原油次第でどこまで上がるか見当は付かないが、天井を打てばそこから4,000円幅の大暴落はあるだろう。井戸を掘るなら水が出るまでで、売り上がり方針を堅持して暴落を待つべし。』とした。

 今週の相場展開は、NY原油高に連動しながら週明けにはストップ高に買われ、翌11日には逆にストップ安。しかし結局それが単なる押し目になってしまったようであり、更に倍返し以上の上げで週末には高値で33,910円まで上昇。GW前の水準からは、もうすでに4,000円ほど上昇した事となる。

 また先物の上昇も激しいが、逆ザヤ相場となっている中で当限〜中物限月の上昇はさらに激しく、6月限はすでに39,000円台となっている。同限の最安値は28,000円以下であったゆえ、すでに1万円幅以上の上昇をしているのだ。6月限を発会で買っていた人が仮にずっと持っていれば、1枚で100万円の利益。10枚で1,000万円の利益の凄まじさは、異常と言うしかあるまい…

 5月13日現在のスポット価格は海上で37,200円(京浜)〜36,200円(阪神)2,100円高〜2,000円高となっており、陸上では35,600円〜34,700円400円高〜200円高となっている。輸入採算価格は40,400円1,500円高となっている。(いずれも前週比)

 例年であれば5月の連休明けからはガソリン相場は値崩れする傾向にあるのだが、今年は元売各社の大規模定修や鹿島製油所の火災事故、そして何よりも大元の原油価格の暴騰によってスポット価格は大暴騰。

 素直に原油からの採算ではじき出されるシンガポール市場の輸入採算値は4万円台に乗せており、まさに凄まじいばかりの急騰と言えよう。

 しかし陸上価格は然程の上昇とはなっておらず、今のところは末端のスタンド価格もさほど上昇してはいない。また週末の当限価格39,000円台は、スポット市場よりも2,000円ほど高いわけで明らかに買われ過ぎでもある。

 今のところ実際の消費者に渡るスタンド価格がさほど上げていないため、このガソリン高騰も新聞・テレビなどのマスコミでもあまり騒がれていないようだ。案外タイムラグがあって、先物が下落を始めてからスタンド価格が上がり、そしてテレビで騒がれている中で実際相場の世界では天井打ちをすでに終了して、下げ相場に入っているという皮肉なパターンが到来するかも。

 この急騰相場の最中にそんな事を言っていても仕方ないが、テレビで騒げば素人はみんな買い付くし、それが下げ相場を演出して行くのは相場の常だ。

 さてそれでは、一体この相場はどこで天井を打つのか?すでに先物11月限も発会から4,000円上げているわけだが、過去の相場パターンから見れば幾ら上げてもあと2,000円がせいぜいではあろう。もちろん2,000円幅は1枚で20万円替えであるため、それをせいぜいと言うのは語弊があるのは承知の上であるが…

 しかしいったん下げ始めれば、2,000円幅など僅か2日か3日で下がる事となろうし、先物の3万円割れまでは確実に下がるだろう。なぜって言われれば、相場と言うものは天井確認をすれば、ほぼ往って来いの暴落をするのが常だから…としか言いようは無い。銀相場しかり、プラチナ相場しかり、コーン相場もまた同様であるからだ。

 …中略…

 結論として当方の相場観は、野も山もすべて強気になってきた相場展開ではあるが、天井打たぬ相場は無しとの信念で売り方針。ただし天井確認するまでは建て玉をあまり増やさず、決まってから乗せ乗せで攻めるのか肝要。

 

 

今週の灯油の値動き

 

6月限(当限)

前日比

11月限(先限)

前日比

5月10日

\31,950

700

\35,110

670

5月11日

\31,550

-540

\34,410

L700

5月12日

\32,180

630

\34,830

420

5月13日

\32,860

680

\35,480

650

5月14日

\33,500

640

\35,790

310

 

 最後に灯油です…先週号においては、『石油相場全体に弱気な当方ゆえ買いたくはないのだが、鞘取りなら灯油はまだ買いであろう。当方と逆に強気方針ならば、灯油の目標値は37,000円也。』とした。

 今週の相場展開は、原油・ガソリン相場同様に急騰の展開。これらが天井を打たねば、大衆筋の売り込み型になっている取組み内部要因から見ても、灯油もまた下げないのは道理。

 特に期近に行くほど上昇が激しい展開になっているのも、不需要期の灯油は買えない大衆筋と、ガソリン売りで掴まっている○○筋のヘッジ買いがはまっているため、騰勢は止まらずである。

 今のところ灯油が原油・ガソリンに先んじて天井を打つ気配は無く、また臨時増し証拠金が灯油のみに掛かって値幅制限が拡大されたのも、弱材料に働くよりは苦しい売り方の踏みに繋がったような週末の状況であった。

 もちろん踏み一巡後は、やはり新規買いは灯油よりもガソリンへとの傾向は強まるものと思われ、灯油のみが上昇して行くことなどは無かろうと思われるが…

 ただし来週20日に6月限が納会した後、先物にはまた12月限という需要期限月が週末に発会する。このまま原油相場が下がらぬ場合には、順ザヤにまた買われて案外37,000円というべらぼうな目標値が達成される可能性もあろう。

 5月13日現在のスポット価格は海上で29,400円(京浜)〜29,300円(阪神)400円高〜300円高となっており、陸上では29,500円〜29,000円変わらずである。輸入採算価格は37,600円と500円高になっている。(いずれも前週比)

 33,000円台半ばまで上昇した不需要期の6月限は20日に納会を迎えるが、これはスポット価格よりも3,000円も高い状態ではあるものの、シンガポール市場から算出される輸入採算からはまだ4,000円安い国内では使わぬものの、海外に輸出すれば採算は取れるわけであり、またジェット燃料などに加工すれば簡単に売れるか…どうせ売るならガソリンか原油とする訳がここにある。

 …中略…

 結論として当方の相場観は、原油・ガソリン相場が下げに転じれば灯油も当然下がろうが、3品をすべて売るわけにはいかない。灯油は、売るのを避けたいと考える。

 

 

 

〔貴金属〕

 

今週の金の動き

 

6月限(当限)

前日比

4月限(先限)

前日比

5月10日

\1,371

-7

\1,367

-4

5月11日

\1,389

18

\1,385

18

5月12日

\1,376

-13

\1,375

-10

5月13日

\1,385

9

\1,378

3

5月14日

\1,383

-2

\1,381

3

 

 金相場は、先週号においては、『人気離散でしばらく戻り売り相場に変化は無いだろう。』とした。

 今週の相場展開は、10日の安値1,358円と13日の高値1,387円の僅か29円幅の中に納まるおとなしい相場展開となった。

 円安ではあるものの、円安下ではNY市場安。逆に円高に振れればNY市場高では、どちらにも大きく動きようが無い。動かぬ相場は人気が出ないため、どうせやるなら石油相場か貴金属ならプラチナ相場と言う雰囲気であり、今は蚊帳の外の金相場である。

 もっとも指標のNY市場は完全に下げトレンドであり、仮に為替の円安傾向が逆行するような事態になれば、いずれ1,300円そこそこまで下落するのではなかろうかと考えられる。

 …中略…

 結論として当方の相場観は、戻り売り相場に変化なしである。

 

 

 銀相場は、先週号においては、『戻り売り方針に変化なしであるが、高値からすでに80円近く下がった相場である。おいしいところは終っているだろう。』とした。

 今週の相場展開は、週明け10日には200円の大台割れとなる198.5円まで下落。翌日は急反発のストップ高を演じたものの後が続かず、200円台前半でのもみ合いとなった。

 大暴落を演じておいしいところは終っている相場だけに、ここから応分の戻りを入れてもおかしくは無し、横ばいしてもおかしくは無し、また逆に止まったと見せてまた下げ始めてもおかしくは無し…である。いずれにしろ、手掛けて妙味があるとは思えない。しばらくは当方にとっては、全く興味なしの相場である。

 …中略…

 結論として当方の相場観は、今は手出し無用であり、しばし見送りの相場であると見る。

 

 

今週の白金の値動き

 

6月限(当限)

前日比

4月限(先限)

前日比

5月10日

\2,812

-29

\2,643

-18

5月11日

\2,872

60

\2,717

74

5月12日

\2,860

-12

\2,711

-6

5月13日

\2,936

76

\2,791

H80

5月14日

\2,924

-12

\2,784

-7

 

 プラチナ相場は、先週号においては、『幾ら戻っても2,800円台が限界だろう。天井を確認した相場は、長期間に渡って戻り売り相場を作って行く事になると考える。』とした。

 今週の相場展開は、6日に一時2,557円まで大暴落した後2,600円台でもみ合っていた相場が、13日のストップ高の急騰から週末には一時2,806円まで上昇。その後また2,700円台に入って終了している。

 先週号において『仮にここから反発に転ずるとして、4月19日3,127円から5月6日2,557円までの下げ幅570円幅に対し、3分の1戻しなら190円戻しの2,747円半値戻しなら285円戻しの2,842円である。

 おそらく最大戻って半値戻しである2,800円台が限界ではなかろうか?そこから次の下げ目標地点である2,400円どころに向けて、下がるのではないかと予測している。』とした水準への反発である。

 おそらく週末の2,800円台乗せとなる2,806円で、今回の自律反発相場は終了している可能性が高いだろう。249円幅の反発を入れた相場は、次の下げ波動に入った場合には最大で倍返しの498円幅の下げ地点である2,308円まで見ておく必要もあるだろう。

 とにかくこのプラチナ相場は、二十数年ぶりの高値を記録して天井を打った相場である。歴史的な高値を記録した相場が、僅か1ヶ月の下げで終るはずも無かろう。数年がかりの上昇相場を演じたものは、数年下げ続けても何の不思議も無かろうと見る。

 …中略…

 結論として当方の相場観は、今回の2,800円台への戻りは初戻りであり、相場格言で言うところの『初戻りは売り!』の場面であろう。絶好の売り場であると考えている。

 

 

 

〔コーン〕

 

今週のコーンの値動き

 

7月限(当限)

前日比

5月限(先限)

前日比

5月10日

\18,170

-260

\19,100

-230

5月11日

\18,270

100

\19,120

20

5月12日

\18,510

240

\19,500

380

5月13日

\18,300

-210

\19,660

160

5月14日

\17,800

L500

\19,160

L500

 

 先週号においては、『まずは底入れ〜上昇相場前に18,800円と19,150円に空いた窓埋めに動くと考えており、その後この下落過程で上に空いた22,000円どころの窓を埋めに行くのではないかと想定している。』とした。

 今週の相場展開は、11日に18,890円の安値を記録した後13日19,660円までの反発相場に入ったわけだが、週末の前場3節に○○商事の手仕舞い売りや弱気大手筋・○○筋の叩きなどでストップ安まで下落。19,160円まで再び値を沈めての終了となった。

 米農務省報告は大豊作予測だが、需給関係から見れば強気の内容であるものが出されたものの、現状では青田ほめの状況が強く、シカゴ市場も大豆を中心に大きく値を消す展開。

 今回もコーンの相場解説は『蛎殻町かわら版の平井氏』にお願いしたため、当方の相場観は結論だけ書く事とする。

 結論から言えば当方は、18,890円で底打ちと考えていたのだが、現状では下値はもう少し深いかもしれない。18,500円どころか、ひどい場合は18,000円そこそこ…2万円台の出現は、天候が悪化しない限り難しいかもしれない。

 さほど弱気転換したわけではないが、本格的な相場上昇は天候相場期では無く、需給相場期に入ってからかもしれない。

 

 平井レポート5月15日記)

 内外共に戻り売り基調を余儀なくされている。

 シカゴ相場に関しては材料的な見地からは良好な天候から豊作を織り込み始めている相場となってしまった。確かに、作付状況から作付面積が200万エーカー程度の上積みが見込まれており、12日のUSDA需給発表で出された145buという単収が実現すれば低水準な在庫も一息つくこととなる。だが、需要も拡大しており、豊作が実現しても在庫がだぶつく懸念もなく、その辺を加味すれば下値も限られるのである。

 問題はファンドが良好な天候を手掛かりにタオルを投げた状態となっており、買いポジションを解消させる可能性が出てきているし、現実に連日の手仕舞い売りは相場を下値に誘導している。だから相場は弱材料に敏感であり、上昇は単発に止まっている流れとなっている。

 では、現在明らかになっており今後も影響しそうな弱材料を挙げると、作付面積の拡大観測が強い事や、輸出市場から姿を消している中国が同国政府から数量は限定的ながら輸出許可が下りたという観測が流れている事。そしてここに来て大豆相場が大手消費国である中国の搾油工場の倒産拡大や、南米産大豆製品の米国輸入などを背景に急落している事。

 トウモロコシは7月の受粉期を無事に乗り切るまでは作柄は固まらず、豊作を先取りしている相場は買い有利という方程式が成り立つが、現在の環境はファンダメンタルズ以上の売りそうな気配も感じられ、まだ下値を想定しながら戦うべきと考える。

 東京市場は引き続きフレート(海上運賃)安が相場を重くしている。先週書いたことは概ね間違いではないのだが、相場が戻りを入れたことで外商○○の売りを更に誘い、同社は東京定期機関店3社(O社・K社・M社)で3000枚を超える売りポジションとなっている。

 一方、期近に買い玉を抱えている国内大手商社はその一部を手仕舞い売りする動きに転じており、その意図するところは不明も買い方の精神的なダメージは大きい。まだ期近の商社の動きはどうなるか予測が難しいのだが、買い方サイドからはあまり大きな期待はし難い。

 個人的にはこの相場は買いに期待をかけているが、冷静に足元の相場を分析すればするほどまだ厳しい戦いを余儀なくされそうな情勢である。ただし、相場は「需給が全て」という格言もあることから、現在の在庫水準はけして潤沢ではなく、天候に懸念が生じれば大きく跳ね上がる下地を抱えている点は疑う余地が低い。

 問題は天候に懸念が出るかどうかであるが、豊作な年でも一度や二度の天候懸念の高まりはあるし、ファンダメンタルズ以上に売られた場面は買いを入れても報われる可能性は十分にある。最終的に豊作となっても相場はそれなりのラリーを演じる可能性はあるのである。

 東京相場はシカゴ以上に弱気な動きとなっており、ラリーを演じるにはやはりシカゴ相場の立ち直りが必要で、そのタイミングはメモリアルデー(5月の最終月曜日)後ではないかと考える。

 

 

 

 

〔ゴム〕

 

今週のゴムの値動き

 

5月限(当限)

前日比

10月限(先限)

前日比

5月10日

140.7

0.2

146.9

-1.0

5月11日

142.0

1.3

148.0

1.1

5月12日

145.3

3.3

151.5

3.5

5月13日

148.2

2.9

154.0

2.5

5月14日

151.4

3.0

156.5

2.5

 

 先週号においては、『今後徐々に戻り売り相場を鮮明にして行く事が想定される。140円割れを目指す相場展開であり、上海市場の動き次第では下げに加速が付くかもしれない。』とコメントした。

 今週の相場展開は、週明け10日に146.4円まで下落した後は急騰相場に転換。あれよあれよと言う間に切り返し、週末には156.5円と安値から10円幅の急騰を演じる事となった。

 ゴム自体に特に強材料が出たわけでは無いが、為替の円安、原油高、タイ市場が思ったほど下落せず大幅に輸入採算が割安となった事、上海市場も安値もみ合いとなっているが大幅下落は回避された事…などが複合的に買い要因とされたようである。

 また内部要因においても、ファンドの投げ一巡と見られる動きやシッパーの買い、なぜか高くなると買ってくる○○の動きなどが、この急騰を演出したようである。もっとも週末の時点では、そのシッパー筋は輸入採算が大分詰ったために利食い売りを掛けていた様ではある。瞬間的に160円台乗せも無いとは言わないが、その水準まで上昇すれば今度は逆にシッパーは売ってくるかもしれない。

 さて中国の買い付けであるが、今のところ昨年とはまったく違いそのような動きは見られない。上海市場も上がる気配は全く無い。

 そんな中でタイは完全に減産期明けとなっており、いずれ価格は下落してくるはずではあるが、現状での輸入採算値は161円台である。ファンドの投げによって採算の15円下まで売られてしまっただけに、この急騰に繋がった事は間違いないだろうが、だからと言ってここから産地高と東京高が複合してスパイラルに上げてゆく事は不自然だろう。先週のコメントは大曲りではあったが、やはりここからはまた戻り売り推奨と考えざるを得ない。 

 結論として当方の相場観は、今回の上昇はあって輸入採算とくっつく160円どころまでであろうし、ゴムのファンダメンタルズを考えた場合は戻り売り方針に変化無し

 

 

 

〔アラビカコーヒー〕

 

今週のアラビカコーヒーの動き

 

5月限(当限)

前日比 

3月限(先限)

前日比 

5月10日

\9,670

-280

\13,400

-60

5月11日

\9,910

240

\13,600

200

5月12日

\9,970

60

\13,910

310

5月13日

\9,510

-460

\13,940

30

5月14日

\9,640

130

\14,000

60

 

 先週号においては、『大相場に繋がるかどうかはブラジルの天候次第の面はあるが、流れは完全に押し目買いに変化していると見る。11月限辺りを仕込んでおいて損はないか…』とコメントした。

 今週の相場展開は、週末には高値で14,160円まで上昇。引けは13,970円で終了となっているものの、連休前の安値12,050円からはすでに2,000円以上の上昇となっている。

 いよいよ産地ブラジルでの天候相場が近づいてきている。今のところ長期予測の天気予報は、一番寒くなる8月辺りまで降霜の懸念は無い様である。また生産高も5,000万袋に及ぶと言う大豊作予測も出されて始めてはいる。

 確かにブラジルは産地が北部に移動した関係上、降霜懸念は過去の遺物であり、コーヒー自体がかつての様に大暴騰を演じるような材料は少ないだろう。しかしその大暴騰というのは、70セント程度のNYコーヒー相場が300セントにもなるというレベルの話であり、東京市場なら1万円の相場が4万円になるというレベルの話は無いと言う事。

 しかし内外ともに取組み内部要因は変化して来ており、チャートも底打ちを明確に示唆する形となって来ている。天候に支障が生じなくても、懸念を囃すだけでNYベースの100セントや東京市場の16,000円台程度までの上昇なら、その可能性はゼロでは無い(むしろ高い)だろう。

 …中略…

 

 さて指標のNY市場は、4月22日の66.80セント4月30日の66.90セントW底パターン。そこから5月には入って70セント台を回復し、現状はもみ合い状態となっているものの底入れは完了している姿

 …中略…

 結論として当方の相場観は、国内市場の内部要因では売り込み型の相場展開に変化して来ている。押し目買い有利の相場展開が続くだろう。

 

 

 

〔粗糖〕

 

今週の粗糖の動き

 

7月限(当限)

前日比 

11月限(先限)

前日比 

5月10日

\21,260

-340

\22,420

-300

5月11日

\21,250

-10

\22,000

-420

5月12日

\20,670

-580

\21,610

-390

5月13日

\21,040

370

\22,000

390

5月14日

\21,040

0

\21,750

-250

 

 先週号においては、じばらく逆張りの展開が続くと見る。』とした。

 今週の相場展開は、12日には21,500円まで下落であるが、上がったり下がったりの日替わり上下波乱の展開となった。ただ流れとしては、やはりどちらかと言えば下向きであると言えるような展開である。

 この下落の材料としては、主要生産国ブラジルでサトウキビ収獲が始まっているため、同国からの輸出圧力が強く、内外とも軟調に推移していると見る事が出来よう

 世界需給に関しては、今年に入って国際統計機関2社が不足と言う見解を抱いているものの、ブラジルの生産高は現在4年連続増産の見通しに傾いており、それが嫌気されているのだろう。

指標のNY市場においては、7セント台から6セント前半まで価格を切り下げており、大量に買っているファンドの投げが懸念される状況となって来ている。

 …中略…

 結論として当方の相場観は、NY市場でのファンドの投げが本格化して来た。戻り売り相場に完全に変化してしまったと見る。

 

 

 


 

 このレポートは、私が個人的な判断で書いたものです。

内容の責任はすべて私に帰するものですが、取引に対する利益を保証するものでは在りません。

(当たり前ですが念のため)

 

 

 

 

        岡地株式会社 営業第一部 コモディティアドバイザー

                       中田幸一郎

        TEL:03−5643−8509 直通

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